主に16-18世紀半ば頃に楽器の女王として盛んに演奏されていたリュート。ではその生き残りは一体いつくらいまで演奏されていたのでしょうか?「リュートなんて昔々の古い楽器」なんて思われている方にとってはちょっと意外かもしれませんが、実はモーツァルト(1756-1791)やハイドン(1732-1809)の時代、つまり19世紀の初頭でもドイツ語圏では演奏されていました。(日本で言えば江戸後期)

オンライン 通奏低音、リュートソング、アンサンブル、古楽、音楽教室 リュート クラシックギター ウクレレ 池袋 蕨 川口 東京 埼玉 レッスン

リュートを抱えるハイドンとモーツァルト?を描いたされる銅版画

18世紀末までマインツ選帝侯の宮廷音楽家であったC.G.シャイドラー(1747-1829)は最後のリュートの名手として知られています。ただリュートの名手とは言ってもリュート作品を多く残したわけではありませんでした。モーツァルト の「乾杯の歌」(オペラ「ドン・ジョバンニ」より)をテーマにバロックリュートの為に書いた変奏曲が唯一知られています。

このシャイドラーより少し後の世代で、ギター界のヴィルトーソとして有名だったF.ソル(1778-1839)もモーツァルトの「これはなんと素晴らしい響き」(オペラ「魔笛」より)をテーマに変奏曲を残しております。いわゆる「魔笛の主題による変奏曲」として現代でもよく弾かれるギターの定番曲です。テーマは違えどリュート、ギター双方にモーツァルトの作曲したテーマによる変奏曲が書かれている事は興味深いですね。

オンライン 通奏低音、リュートソング、アンサンブル、古楽、音楽教室 リュート クラシックギター ウクレレ 池袋 蕨 川口 東京 埼玉 レッスン

C.G.シャイドラー
(1747-1829)

また主に18世紀にコンティヌオ(通奏低音)やソロに用いられたリュートの一種であるマンドーラ(mandora)も19世紀初頭までドイツ語圏で演奏されていました。マンドリンより一回り大きく、ヴィオラの音域に相当するマンドラ(mandola)とはRとLの一文字違いなので大変紛らわしいですが別の楽器となります。弦は6-9コースでE調弦(現代のギターと同じ)やD調弦、弦長は650-720mmほど、ネックは比較的長め、巻きフレットはリュートより多めの10-12フレット、ペグボックスが直角ではなく緩やかな角度で取り付けられている楽器もあったようです。18世紀半ば過ぎ、13コースのバロックリュートが徐々に先細りしていく中、このルネサンス時代のバスリュートみたいな楽器は19世紀初頭まで主に愛好家らに演奏されていたようです。余談ですが、このマンドーラは後にリュートギター呼ばれるリュート型のギター(ボディの形はリュート、弦はシングルで調弦もギターと同じE調弦)に変化し、主に20世紀初頭のドイツ語圏で用いられました。

リュートはギターとは違ってその伝統が一度途絶え、古楽復活の先駆者であるA.ドルメッチ(1858-1940)らによって19世紀末に復元を始まったとされています。しかしこのような流れを見ると歴史上の空白期間というのもそこまで長いものではなかったのかもしれません。リュートは不器用な面も多々ありますが、ソロも伴奏も出来て、持ち運びも出来て、多種多様なニュアンスをつけられる楽器です。そんな楽器だからこそ長い期間、様々な地域の人を惹きつけてきたのではないでしょうか!

オンライン 通奏低音、リュートソング、アンサンブル、古楽、音楽教室 リュート クラシックギター ウクレレ 池袋 蕨 川口 東京 埼玉 レッスン

マンドーラ