リュートのレッスンに来られてそろそろ2年ほど経つHさん。大変熱心にレッスンに通われ、探究心もとても旺盛なHさんは古楽関係の情報通でもあります。インターネットやSNSなどを駆使して様々な情報を収集されており、こちらが教えてもらう事もしばしばです。

つい先日も「こんな本が最近出たのですが、どうでしょう?」と歌手・指揮の櫻井元希さんが書かれた「旋法とヘクサコルド」という新刊本を持って来られました。グレゴリオ聖歌やそれに関係する旋律ドリルをソルミゼーション(古式6音階名唱)で繰り返し歌い、教会旋法やそれぞれのシラブル(ut re mi fa sol la)の特徴を実践的に学ぶ!といったような内容のテキストでした。

調性音楽が骨の髄まで染み入っている現代人にとって、それ(調性)以前の音楽がいまいちピンと来ない、感覚的にわかり難いと感じる一つの要因に、旋法やシラブルの特徴を体で掴めていないという事は大いにあるかもしれません。ルネサンスリュートをやっていると「この曲は明るいんだか、暗いんだか?」「ここは半音下げるんだ?」なんて曲に必ず出会う事でしょう。

旋法や対位法など理論的な事に関する資料(日本語で読める)はそれほど多くありませんが、そういうものを読んで仮に理解出来たとしても、正直実際の演奏にどう反映したら良いか?モヤモヤしている方も多くいらっしゃるでしょう。リュートに限らず、調性以前の音楽に取り組まれる方にとって、櫻井さんのテキストは助けになるのではないか思います。

ルネサンスの時代には「旋法の事は修道士に聞け」と言われていたように、繰り返し体で覚える事が遠いようで結局は近道なのかもしれません。なおこのテキストはムタツィオのやり方について若干の説明はありますが、何も知らない方は読んだだけでは多分理解出来ないと思います。それについては別途また学ぶ機会を作った方が良いと思います。

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